2023年上半期お疲れ様でした。もう半分終わってしまった…
次は8月のTOKYO FESに参加予定です。8月の本にとりかかる前に上半期に作った本の装丁について記録を残しておこうと思います。
二番目の恋人
3月/春コミ 文庫サイズ
ず〜っとやりたかったんです!この、オーロラ箔をまんなかにどんと水滴っぽいイメージで置くデザイン。本の内容もちょっと切ない、やさしい雰囲気(のつもり)なので、表紙もやさしい透明感のあるイメージにしたいと思って作りました。
印刷:緑陽社さま
表紙:キュリアスIRホワイト
インク:濃グレー(緑陽社基本色)一色刷り
特殊加工:オーロラ箔
遊び紙:柄つきトレーシングペーパー
オーロラ箔が目立つので、一色刷りでもそんなにさみしい印象にはなってないんじゃないかな?と思っています。このシャドウオーバーレイのpsdファイルも一度グレースケールにして、同じ濃グレーの色に変換して配置しています。
箔のベタ、かすれたり箔自体の切れ目が目立ってしまったりと加工がむずかしいようで、入稿後に「精細箔扱いになります」と言われて追加料金がかかってしまいました…
ただ、緑陽社さん、早割入稿すればかなり割引がきくし、なによりポイントがざくざく貯まるので!今回の追加料金は今まで貯めてきたポイントを全投入しました(もう入稿後でデザイン変えられなかったし… ちなみに「かすれたり欠けてもいいのでそのままGOで!」というのはできないと言われました)
印刷前のチェックもとてもていねいで、どうやら本文の中まで見てくれてるっぽいです。一度ここ文字ないのですが大丈夫ですかと内容にまで連絡をくれたことがあります(そこは内容的にだいじょうぶなところでした)。
オーロラ箔、かたむける角度によっていろんな色になってきれいです。
お気に入りはこのくらいの角度。
空の色みたいで好きです。
ちなみにわたしはこのキュリアスIRホワイトという紙がとても好きです。写真ではうまく写すことのできない、こまかいチラチラとしたラメが入っているかわいい紙。紙自体の質感も好きで、去年作った「キス・アンコール・キス」という本も緑陽社さんで同じ紙を使って作りました。
余談ですが、これがはじめての二色刷。これで色刷りの楽しさに目覚めました…
このときもスポットライトの当たる部分だけにホログラム箔を貼りました。めちゃくちゃ頑張って早割入稿した思い出…
ちなみに遊び紙に、緑陽社オリジナルの「ボタニカル柄」というものを前のみ入れました。冒頭が5月のイメージで、メタルグリーンのボタニカル柄が合ってるかなと…
いつもは一ページ目に表紙を流用した扉を入れるのですが、このときはあえて遊び紙から透ける一ページ目から本文、冒頭部分が終わってから見開きで扉を作りました。なんていうかアニメとか映画の冒頭部分が終わってからOPの始まるイメージで… 自己満なんですがちょっと気に入っております。
二番目の恋人 p.s.
3月/春コミ 文庫サイズ
印刷:プリントウォークさま
表紙:ハンマートーンGAスノーホワイト
インク:ダークグリーン、金
一冊目の本のその後の番外編として作りました。表紙の封筒とコインは一冊目の本の中に出てくるもので、なんとなく結婚式の招待状っぽいイメージです。
このぼこぼこした紙がとてもかわいかった!スノーホワイトだけど、ちょっと生成りがかった白にも見えます(デザインのせいかも…)。
ぼこぼこはこんな感じ。
はじめてメタルインキを使いました!感想は、思ってたほどにはギラギラしたメタル感はないな!という感じ。ベタ部分がかたむけるとちょっと光るかな〜程度です。でもかわいい。
38Pと薄い本なので、本文用紙にちょっと厚めのコミック紙を使ってみました。このくらいのページ数ならコミック紙がちょうどいい気がします。
エレリと、マドリ
6月/ジュンブラ B6サイズ
印刷:西村謄写堂さま
紙:アドニスラフ
インク:青、蛍光オレンジ(バルカンオレンジ)
先日のジュンブラで作った合同誌です。先日のブログにも書いたのですが、やってみたかったことを詰め込みまくりで作りました。
間取り図をイメージしたロゴを褒めてくださる方がいてうれしかったです!
まずむずかしかったのが印刷所探しで、中綴じのだいたいの最大ページ数を鑑みてちょうどいい値段設定のできる印刷所がなかなか見つからなくて、いろんなところに見積もりをお願いしました。全ページ二色刷、しかも蛍光インク(あってもオレンジはなかったり)がネックで、たぶんできるけど高いよな〜…と保険のように残していた西村さんに聞いたらあっさりいい感じの見積もりを出してくれたので泣きそうでした。ほんとうにありがたかった…!
小説・文字と漫画・イラストをそれぞれ担当ごとにページでわけるのではなく、文字のデザインとイラストを組み合わせたページも作りたかったので、データ形式に悩みました。一色刷りならPDFでかんたんなんでしょうが、文字もイラストも二色にしたかったので…(たとえば以下もくじページのように)
これはinddデータでの入稿しかない(私の知識ではたぶん)のでそれもネックだったのですが、あっさり大丈夫です〜と返ってきて大変ありがたかったです。
濃いめの蛍光オレンジと青の組み合わせ、めちゃくちゃかわいいと思うんですがどうでしょうか!?
アドニスラフのざらざらとした質感との相性が良い…かわいい…
すでに忘れ始めていてやばいデータ制作の備忘録(箇条書き)
・配置したイラストはクリスタで制作、psdで書き出し
・描くときにざっくりインクの色に近い青とオレンジで描いてもらい、色ごとにレイヤー分け(レイヤー分けに意味があったかは不明)
・もらったpsdデータをPhotoshopで開く。インクの色をスウォッチに登録しておく(DICカラーはカラーブックから選択。TOKAの蛍光インクは公式サイトでスウォッチがダウンロードできた)
・チャンネルを開く。ざっくりインクの色に近い色で描いてもらったおかげでシアンとイエローのチャンネルに青とオレンジにしたい部分が分かれているので、シアンとオレンジを複製。ダブルクリックしてオプションを開き、色部分をクリックして登録しておいたスウォッチを選択。色が変わり、チャンネルの色名も自動で変わる
・レイヤーのオプションでチャンネルミキサーを設定。チャンネルミキサーの「出力先チャンネル」のCMYKを一色ずつ選択し、それぞれの色を0%にする
・特色二色刷データの完成、それをインデザインに配置
たぶんこんな感じだった。これの難点というか再現可能なのか心配なのは、クリスタで描いてもらうそのときなんですよね…。クリスタはどうやら色を数値で指定して描けないようなので、今回はオレンジと青という全然違う色だったからうまくいっただけかもしれない。赤とピンクで作りたいとかなったらこの方法ではダメだと思います。たぶんフォトショでレイヤーマスクとかで作れるのかな…わからない
ちなみに今回入稿データを作るにあたってとてもお世話になったのはこちらの本です。
32Pという中綴じの本なので、どこにどのページを入れるかはじめて台割を作って考えました。
汚すぎるんですがこんな感じ
いつもは小説だけなのであんまり見開きとか関係ないんですが、ざっくりでもこういうラフを作って考えると途中で悩まなくてよかったです。今後もやってみようかな。
雑誌風にレイアウトを考えるのもはじめてで、すごく楽しかったです。
裏表紙はこんな感じ。扉ページのすみにつけた各エレリ部屋の間取りを配置しました。
イメージなので、間取りとしておかしくても目を瞑っていただけると幸いです
センセイのお気に入り
6月/ジュンブラ 文庫サイズ
印刷:ホープツーワンさま
表紙:ミニッツGAスノーホワイト
インク:ピンク、青
特殊加工:角丸
遊び紙:タントセレクト TS-7
このミニッツGAという紙も大好きで…!今回はこの紙を使いたいと最初から決めていたので、小説にちょうどいいセットでこの紙が使える印刷所をさがしました。
やわらかいのにPPなしでもしっかりしてて、布っぽいこまかいエンボスの質感がかわいい。
角丸もかわいいし総合的には満足なんですが、ちょっと残念…というか気になってしまったのは以下二点
・インクのピンクがちょっと思ったより明るかった。ホープツーワンさんはオリジナルインクを使っているそうで、DICカラーの近い色の番号を教えてもらったんですが、それよりちょっと蛍光寄りなピンクだったかな…という印象です。でもインク見本を取り寄せなかったし、これはこれでかわいいのでよし
・背景の斜めストライプがうまく印刷されてなかった。お手元にある方はわかるかもしれないのですが、柄が太いストライプのように印刷されている部分とされていない部分に分かれてしまっています。イベント後に問い合わせてみたところ、ストライプの線幅が細いこととインクの色が100%じゃなかったことで、印刷がかすれてしまったとのこと。本来はデータチェックの時点で印刷がうまく出ないことを連絡すべきだったがしなかったとていねいに謝ってくださった(申し訳ない…)
インクの色、実物を見てみないとわからないこともあるのでそこが色刷りの楽しさであり難しさでもあるな〜と思いました。
ちなみにデザインは、やってみたかった帯付き風です。内容とか本文を表紙自体に書いちゃうの、わかりやすくて目を引くんじゃないかと思ったんですがどうですかね… 自分ではけっこう気に入っています。
ちなみに裏表紙のバーコードは、バーコード風の欧文フリーフォントです。よくみたらERENXLEVIとか書いてあります。
かわいい!
遊び紙は細かいレース模様のようなエンボスの入ったピンクの紙です。表紙のピンクとお揃いっぽいイメージで選びました。あとちょっとレースっぽさでジュンブラも意識…
小説本文について
個人誌は上記の本はすべて同じ設定で作っています。
フォントサイズ:12Q
行間:7H
行と段組:41文字×16行
フォント:リュウミンL-KL、かなのみリュウミンL-KS
配置:天15mm、地10mm、小口12mm、ノド18.75mm
去年作ってた本がだいたい11.5Qだったんですが、ちょっと小さいかな〜という気がして… あと本文用紙にもよるんですが、17行だとちょっとノド部分が読みづらいかなという印象で、今年はこの組み方に落ち着いています。
ちなみに12Qだと文字のサイズが3mmちょうどになるので、天と小口のマージンを5文字分、4文字分とピッタリサイズになるようにしているのが地味なこだわりです。
合同誌に関しては、とにかく文字数を稼ぎたかった&中綴じなのでノド側もギリギリまで読める!ということでかなりぎっちり文字が入っています。
フォントサイズ:11.5Q
行間:7.5H
行と段組:二段組(段間6mm)、27文字×24行
フォント:上に同じ
配置:天:8mm、地:12.75mm、ノドと小口:7.937mm
天、ノドと小口をほぼ同じ8mmになるように設定。せっかく二色使えるのに青一色なのがもったいないなと思って、下にオレンジでドットのラインを入れました。そのために地側を広めにとっています。
すごく長くなってしまいましたが、上半期はこんな感じでした!とても楽しかったです。
ここに載っていないものも含め、既刊はこちらのページにまとめてあります。
本をお手に取ってくださった方、どうもありがとうございました。一言でもご感想がいただけたらとてもとても嬉しいです。ご質問でももちろん大丈夫です。読む時間ないけど装丁だけ…の感想でも!笑
ここまで読んでくださりありがとうございます🎶 また下半期もたのしく本を作りたいです!